大学進学で実家を出ても、多くの大学生は親の健康保険の扶養に入ったままです。自分で保険料を払う必要がなく、マイナ保険証または資格確認書を提示すれば病院の窓口でも3割負担で診てもらえます。ただしこの扶養は永久ではなく、バイト収入が一定ラインを超えると外れてしまいます。外れると学生本人が国民健康保険に加入して保険料を払う義務が出てきます。

2025年10月1日以降、19歳以上23歳未満の被扶養者認定が「年収130万円未満」から「150万円未満」に変更されました(日本年金機構)。さらに2024年12月2日以降、従来の紙の健康保険証は新規発行停止・2025年12月1日で順次有効期限満了し、マイナ保険証または資格確認書への移行が進んでいます。ここでは大学生と保護者向けに、令和7年度税制改正後の制度の仕組み、扶養から外れる条件、外れた場合の手続きを整理します。

この記事でわかること

  • 大学生の健康保険は親の扶養が基本
  • 税法上の扶養(給与123万円以下が基本枠・令和7年改正後)と社会保険上の扶養(19-23歳は150万円未満)は別物
  • 19-23歳は年収150万円(2025/10改正前は130万円)を超えると国民健康保険加入の義務が発生
  • 106万円の壁が厳格に適用されるケースもある
  • 健康保険証→マイナ保険証/資格確認書への移行(2024/12/2新規発行停止・2025/12/1有効期限満了)
  • 遠隔扶養(仕送りで扶養継続)の条件

大学生の健康保険は親の扶養が基本

大学生の多くは、親の加入している健康保険(社会保険)の被扶養者として保険証を持っています。親が会社員なら健康保険組合または協会けんぽ、公務員なら共済組合、自営業なら国民健康保険——親の加入する保険の種類によって扱いが変わります。

親が会社員・公務員の場合、被扶養者として認定されれば学生本人の保険料は発生しません。親の保険料は給与から天引きされる金額のまま変わらず、家族が1人増えても追加負担はない仕組みです。2024年12月2日以降、紙の健康保険証は新規発行されなくなり、マイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」または健保組合発行の「資格確認書」が発行されます。

一方、親が自営業やフリーランスで国民健康保険に加入している場合は少し違います。国民健康保険には「扶養」という概念がなく、世帯全員が被保険者として扱われます。学生本人の分も世帯の保険料に加算される形になり、大学入学前と入学後で保険料が変わる家庭もあります。

いずれのケースでも、大学生本人が自分で保険料を払うことは通常ありません。問題になるのは、学生がバイトを頑張って収入が一定ラインを超えたときです。

扶養の2つの基準: 税法上と社会保険上

「扶養」と一言で言っても、実は2種類あります。税法上の扶養と社会保険上の扶養です。この2つは別の制度で、判定基準も別々に動いています。

項目税法上の扶養社会保険上の扶養(19-23歳)
根拠法所得税法健康保険法
基準となる年収給与123万円以下が基本枠(特定親族特別控除は123万円超〜188万円以下で段階的)150万円未満(2025/10/1以降、19-23歳の新基準)
判定期間1月〜12月の年収今後1年間の見込み年収
外れるとどうなる親の扶養控除が使えなくなる(親の税負担増)学生本人が国民健康保険等に加入(本人の保険料発生)

税法上の扶養から外れても社会保険上の扶養は維持できますし、逆のパターンもあり得ます。このズレが混乱の原因になりがちです。

税法上の扶養は、令和7年度税制改正で大きく変わりました。扶養親族の合計所得が58万円以下(給与収入123万円以下)が基本枠で、19歳以上23歳未満の特定親族については、給与収入123万円超〜188万円以下まで段階的に控除を受けられる「特定親族特別控除」が新設。給与123万円超〜150万円以下は満額63万円控除の対象です。学生の年収が123万円を超えても、188万円までは何らかの控除が残るため、かつての「103万円の壁」ほどの段差はなくなっています。

社会保険上の壁も2025年10月に変わりました。19歳以上23歳未満は150万円未満が新基準で、これを超える見込みになると親の健康保険の扶養から外れます。ここから学生本人に保険料を払う義務が発生します。18歳以下や24歳以上は従来通り130万円のままです。

19-23歳の150万円の壁: 扶養から外れると何が起きるか

社会保険の扶養基準(19-23歳は150万円未満・2025年10月1日以降)を超えると、学生は親の健康保険から外れます。外れたあとの選択肢は主に2つです。

選択肢対象保険料の目安
国民健康保険に加入バイト先が社保に加入させない場合年収160万円の学生で年間10万〜15万円程度
バイト先の健康保険(社会保険)に加入勤務時間・規模が一定条件を満たす場合給与の5%程度が本人負担

国民健康保険の保険料は市区町村ごとに算出方法が違うため、住んでいる自治体の計算式で決まります。年収160万円の大学生(住民税非課税or軽微)でも、均等割+所得割で年間10万円を超えることが多いです。月額にすると1万円弱。学費や家賃を払いながらこの金額を捻出するのは簡単ではありません。

バイト先で社会保険に加入できる場合は、保険料の半分を勤務先が負担してくれるため本人の負担は軽くなります。ただし加入できるかどうかは勤務先の規模と勤務時間によって決まります。

もうひとつ押さえておきたいのは、扶養から外れる判定基準が「今後1年間の見込み年収」である点です。過去の年収ではなく、これから1年間でいくら稼ぎそうかで判定されます。19-23歳の場合、月収12万5,000円(150万円÷12)を3か月連続で超えると、その時点で扶養から外れる判断がされることが多いです。

106万円の壁: 勤務先の規模で適用されるケース

130万円とは別に、106万円の壁というものもあります。これは一定規模以上の勤務先で働く場合、週20時間以上などの条件を満たすと社会保険に加入義務が発生するルールです。

条件内容
勤務先規模従業員51人以上(2024年10月拡大後)
週の所定労働時間20時間以上
月額賃金8万8,000円以上(年収106万円相当)
勤務期間2か月超の雇用見込み
学生原則除外(休学中・夜間部等を除く)

注目すべきは最後の「学生は原則除外」という点です。昼間部の大学に通う学生は、この106万円基準の対象から外れています。勤務先が大規模チェーンでも、週20時間以上働いていても、学生であれば106万円で社会保険強制加入にはなりません。

ただし例外があります。休学中の学生、夜間部や通信制の学生、卒業見込みで在学証明が出せない学生などは、106万円基準が適用される可能性があります。卒業間際に内定先でバイトのように働くケースも該当し得ます。自分が例外に当たるかどうかは、バイト先の総務や健康保険組合に確認するのが確実です。

なお厚労省は、賃金要件(月8.8万円)の撤廃を2026年10月予定、企業規模要件(51人以上)の段階変更を2027年10月以降に予定していると公表しています。2026〜2027年に106万円の壁の運用が大きく変わる可能性があるので、最新の制度動向は厚労省「適用拡大Q&A」で確認してください。

つまり昼間部の大学生にとって、実務上の壁は19-23歳なら150万円(2025/10改正後)の方です。106万円を超えた段階では親の扶養のままでいられます。

勤労学生控除27万円の活用

税法上の扶養には、学生向けの特例があります。勤労学生控除です。

勤労学生控除は、一定の要件を満たす学生に追加で所得税27万円・住民税26万円の控除を認める仕組みです。令和7年度税制改正で要件が緩和され、合計所得85万円以下(給与収入で150万円以下)が新基準です。基礎控除・給与所得控除の見直しと組み合わせると、勤労学生控除を使う学生は給与収入150万円までは所得税が発生しません。

要件内容
合計所得金額85万円以下(給与収入で150万円以下・令和7年改正後)
給与以外の所得10万円以下
学校の種類学校教育法に定める学校の学生

注意点は、勤労学生控除で本人の税金は減らせても、親の扶養控除の構造は別建てになることです。親の扶養控除は給与123万円以下が基本枠で、123万円超〜188万円以下は特定親族特別控除の段階区分(150万円以下なら満額63万円控除)。本人の所得税ゼロを目指すなら勤労学生控除、親の控除を最大化するなら特定親族特別控除と、家計全体で最適化を考えるのが大事です。

19-23歳の社会保険の壁(150万円未満)も勤労学生控除とは無関係です。150万円を超えれば親の健康保険の扶養からは外れます。勤労学生控除は「本人の税金」の話であって、「親の税金」や「健康保険の扶養」とは別建ての制度と理解するのが正確です。

受診手段の種類(マイナ保険証/資格確認書への移行)

2026年5月時点で大学生が実際に使う受診手段は、主に以下のいずれかです。

  • マイナ保険証: マイナンバーカードに健康保険証機能を紐づけたもの。医療機関のカードリーダーで本人確認
  • 資格確認書: マイナ保険証を持っていない人向けに健保組合等が発行する書類。窓口提示で3割負担を受けられる
  • 経過措置の有効期限内の健康保険証: 2024年12月1日までに発行された紙・プラスチックの保険証は、2025年12月1日までに順次有効期限満了。それ以降は使えません

2024年12月2日以降、従来の健康保険証は原則として新規発行停止。2025年12月1日で全ての従来保険証が有効期限満了し、2026年現在はマイナ保険証または資格確認書での受診が標準です。

大学入学のタイミングで親元を離れる場合、マイナ保険証ならスマホ・カード1枚で完結します。資格確認書を使う家庭では、実家宛に届いた書類を学生本人が持って行くことになります。紛失した場合は親経由で健保組合に再発行を依頼。マイナ保険証は紛失リスクが下がる反面、スマホのロックと連動したセキュリティ管理が前提になります。

遠隔扶養: 親元を離れても扶養継続できる

大学進学で実家を出て、住民票を大学のある街に移した場合も、親の健康保険の扶養は継続できます。これが遠隔扶養と呼ばれる仕組みです。

遠隔扶養の要件は、親が「主として生計を維持している」ことです。具体的には以下を満たしている必要があります。

  • 学生本人の年収が150万円未満(19-23歳・2025/10/1以降)。18歳以下や24歳以上は従来通り130万円未満
  • 親からの仕送り額が学生本人の年収を上回る
  • 親子関係を証明できる(住民票、続柄記載の書類等)

仕送りが月10万円あり、バイト収入が月8万円(年収96万円)なら、仕送りの方が多いので扶養要件を満たします。逆に仕送りがほぼなく、学生自身がバイトで生活費を賄っているケースでは、遠隔扶養の要件を満たさない可能性があります。

親の勤務先の健康保険組合によっては、遠隔扶養の証明として仕送りの通帳コピーを求めるところもあります。手渡しで生活費を渡している家庭は、銀行振込に切り替えて記録を残しておくと手続きがスムーズです。

住民票を実家に残したまま大学の街で一人暮らしをするケースも多く、この場合は扶養証明が簡単になります。ただし住民票を移さないまま暮らしていると、市区町村の転入届未提出(14日以内が原則)で行政手続き上の違反になる点には注意してください。

扶養から外れたときの手続き

バイト収入が19-23歳の場合は年収150万円(18歳以下や24歳以上は130万円)を超えそうになり、親の健康保険の扶養から外れることになった場合の手続きを整理します。

ステップやること窓口
1親から健康保険組合に扶養削除の届出親の勤務先・健康保険組合
2扶養削除通知書(資格喪失証明書)を受け取る親経由
3学生本人が国民健康保険に加入住民票のある市区町村役場
4初回保険料の納付コンビニ・口座振替等

国民健康保険への加入手続きは、扶養削除から14日以内が原則です。遅れると遡って加入することになり、未加入期間の保険料も請求されます。

親が自営業で国民健康保険に加入している場合、学生本人も元から世帯の被保険者として加入済みです。修学のため親元を離れる学生は、自治体によっては「マル学(学生用被保険者証)」の届出により、転出前自治体の国保に継続加入できる仕組みがあります。マル学を使えば転出先での国保加入手続きが不要で、保険税の請求も元世帯主(親)宛のまま継続される場合があります。実家・進学先の両方の市区町村窓口で扱いを確認してください。

バイト先で社会保険に加入するケースでは、バイト先が加入手続きをしてくれます。国民健康保険から社会保険への切り替えは、市区町村役場で国保の脱退手続きが必要です。忘れると国保の保険料がいつまでも請求される形になるため、手続きはセットで進めてください。

病気・ケガをしたときの使い方

マイナ保険証または資格確認書を提示すれば、病院の窓口で医療費の3割負担で済みます。大学生の場合、親の扶養として認定されていれば、本人のマイナンバーカード(マイナ保険証連携済み)または資格確認書を持参するだけで受診できます。

ただし以下のケースでは注意が必要です。

  • 引越しで住所が変わったとき: 国民健康保険の場合、住所変更の手続きが必要
  • 一人暮らし中にマイナンバーカード/資格確認書を紛失したとき: マイナンバーカードはマイナポータルから利用一時停止→再交付申請、資格確認書は親経由で健保組合に再発行依頼
  • バイト中にケガをしたとき: 労災の対象になるため健康保険は使わない
  • 自損事故で自分のケガを治療するとき: 原則健康保険で対応可(交通事故の相手からの賠償との調整あり)

通院費が高額になった場合は、高額療養費制度が使えます。自己負担の上限は被保険者(親)の標準報酬月額等で決まり、親の収入区分次第で月5万7,600円程度から数万円〜数十万円まで幅があります。扶養内の大学生でも親の所得が高い区分なら上限額も高くなる点に注意してください。扶養から外れている学生本人でも、本人の所得区分に応じた上限が適用されます。

大学内の学生健康センターや保健室での診療は、多くの場合無料または低額で受けられます。風邪・軽いケガ程度なら大学の健康センターを使うことで、病院に行く回数と医療費を減らせます。

健康保険まわりの時系列まとめ

大学生の健康保険について、入学から卒業までの時系列で整理します。

  • 大学入学前: 親の扶養として認定済み(マイナ保険証または資格確認書)。そのまま入学
  • 入学〜1年生: バイトを始めても年収100万円以下なら扶養継続
  • 2年生以降: バイト収入が増えてきたら123万円(親の扶養控除基本枠)・150万円(19-23歳被扶養者)・160万円(本人所得税ゼロ)を意識
  • 19-23歳で年収150万円超の見込みが立った時点: 親経由で社会保険扶養削除・国保加入
  • 卒業時: 就職したら勤務先の社会保険に切り替え。フリーターなら国保継続

大学4年間を通して「扶養のまま」でいられるのが最もシンプルです。親の税負担も本人の保険料負担も発生しません。バイトを頑張って稼ぎを伸ばすか、扶養内に収めるかは、家計全体で見て判断するのがおすすめです。年収170万円稼いでも、親の特定親族特別控除の段階区分・本人の国保保険料の合算で、手元に残る金額は年収150万円と大差ないことも珍しくありません。


数値の参照元

  • 健康保険の扶養認定基準(年収130万円未満): 全国健康保険協会「被扶養者資格の認定基準」(2026年4月閲覧)
  • 106万円の壁の適用要件(従業員51人以上・週20時間以上等): 厚生労働省「社会保険適用拡大」(2026年4月閲覧)
  • 税法上の扶養控除(103万円・特定扶養親族63万円): 国税庁「扶養控除」(2026年4月閲覧)
  • 勤労学生控除(所得税27万円・住民税26万円): 国税庁「勤労学生控除」(2026年4月閲覧)
  • 国民健康保険の保険料目安: 編集部が主要市区町村の保険料計算式をもとに試算(2026年4月時点)
  • 高額療養費制度の自己負担上限: 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(2026年4月閲覧)
  • マイナ保険証・資格確認書の運用: 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用」(2026年4月閲覧)
  • 遠隔扶養の要件: 全国健康保険協会および主要健康保険組合の被扶養者認定基準(2026年4月閲覧)
  • 掲載数値は参考値です。実際の保険料額・認定基準は加入する健康保険組合や市区町村によって異なります

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